8 posts categorized "未来デザイン"

May 21, 2010

中部発・読売新聞「研究室探訪」に紹介されました!

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 鵜飼です。またまた1月ほど、更新が空いてしまいました。この1月の間に、本年度のバーチャルカンパニーも始まり、そのバーチャルカンパニーが高校生記者の取材を受ける等、外の目で評価される貴重な機会を得ました。雑誌に掲載されるようですので、発刊の運びとなりましたら、改めて報告させていただきます。

 高校生記者の取材の前に、私個人は、読売新聞の記者の方の取材を受ける機会に恵まれました。自分のことを話すことは何だか気恥かしいのですが、さすがベテラン記者の方ですね。知らず知らずのうちに、色々なことを話していました。本日(2010年5月21日)発刊の読売新聞朝刊を読み、「こんな風にまとめると伝わりやすいのだな」と納得しました。

 是非、一度「研究室探訪」を訪ねてみてください。他大学の先生の日常が垣間見れ、面白いですよ。

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December 03, 2007

「問題」の概念規定・再考

「理想と現状のギャップという定義がいまいちあやふや」12月1日にアップした虫鹿君の指摘であり、「問題=理想-現状」という私の図式自体に疑問を投げかけている。彼は、何を言おうとしていたのか?指摘を受けて改めて問題の概念を考え直してみた。

虫鹿君は、ヤマト・リサーチの大和信春先生が主宰する日本IST協会(注)で学び、IAT問題解決士としての見極めを大和信春先生よりいただいている。(注)ISTとは、Information Synthesis Techniquesのアブリビエーションで、日本語では「情報統合技術」と解されている。

IST基本テキスト(日本IST協会・刊)によれば、「問題とは、現状の一部で、上極来果(可能な最上級の将来)の実現を阻んでいる現象を言う。言い換えれば『将来への妨げ』『悪向因』『逸根』である。」(3ページ)とされている。私の理想と現状のギャップの考え方のように、「現状における不本意な結果(悪果)や不満足(あるべき姿と現状とのギャップ)を問題ととらえて対応を探る行き方」(3ページ)とは、根本的に異なるものとされている。

未来デザイン考程でいうところの「未来発想による創る問題」は「上極来果の実現を阻んでいる現象」と同義であり、「過去発想の見える問題」は「現状における不本意な結果や不満足」となろう。

では、「現在発想による探す問題」はどうか?私のアトピー体験から最善未来を描くことのできない状態で、根本的な問題を見つけることに限界があった。となると、上極来果のない現在発想では問題をそもそも見つけることができない。よって、探す問題は、結局のところ、現状における不本意な結果や不満足の原因と考えるのが適切であろう。また、私のアトピー体験からは、原因追究が根本原因を発見することのできないこともあることが分かる。よって原因追求型が適切な解をもたらさない場合もあることを知る必要があろう。

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December 01, 2007

卒業生より「創る問題・考」にコメントが寄せられました(嬉しいこと)

2007年11月5日に掲載した「創る問題って何だろう?私のアトピー体験から見えてくるもの」に対して、私がかつて教えた学生で、約4年前に卒業した虫鹿恭正君より、コメントが寄せられた。現在、虫鹿君は、多彩な顔を持ち活躍している。その一つが、IAT問題解決士としての顔だ。彼は、未来デザイン考程の根幹の一つである「程理学」を学び、問題解決士として活躍している。

ここでいう程理学とは、虫鹿君と議論した際の私の理解の範囲で解説すると、問題解決に向けた考えるプロセスの理論である。「普遍性のある根本指針、究極目的を確認し体現化すること」から始まる「5つの考程(五程)」を基本においている(詳細は、より理解を深めてから解説することとしたい)。

さて、以下は、虫鹿君からのコメント(ママ)である。厳しく評価してもらえたことに感謝する次第である。
・理想と現状のギャップという定義がいまいちあやふやに感じた。
・見える問題と探す問題のメタファーが過去と現在がごちゃごちゃになっている(とくにさがす問題の事例の方で)。
・未来発想で問題を浮き彫りにする際には、探す問題(現在発想で見えてくる問題)の位置が現状把握(探せる範囲での)局面になっていることに気付きました。
・過去発想だと、世の中の時流に乗り遅れる(時代遅れになる)ことに気付きました。鵜飼先生のメタファーにおかれては、問題が見え出してから(過去発想で見えてくるもの)月日が相当過ぎ去っている中で、実は見えない問題が次々と体内外で発生し(肝機能が低下、家族及び人間関係に大きく影響を及ぼすなど)しつつあり、一方で、見えない部分で(というよりも意識的に視野を広げようとしなかった)月日が経つにつれて、鵜飼先生の人脈もより充実し、世の中の科学的にも大きく進化向上しているにもかかわらず、その可能性には、見える問題に執着するあまり、見向きできない状態に陥ってしまったこと。

・鵜飼先生のメタファーを企業及び人材育成に応用することで、イノベーションという定義がより抜本的に浮き彫りすることができると感激致しております。
・また、イノベーション人材育成支援をする人には、五程の観点を身に付けないと、イノベーションを起こす上での企業診断及び人材診断が不可能であることも改めてわかりました。なぜなら、生まれながらに盲目の人に、いくら「景色が見えるってこういうことだよ。色が見えるってこんなことだよ」と克明に説明したところで、実際に体感している人と体感していない人とでは、雲泥の差があるからです。実際に出産した人でないと、本当の出産の苦しみなんてわからないのと一緒です。
・今後の課題としては、いかにイノベーション人材を育成する上で、支援する人にも支援される人にも、五程をいかにして体感してもらえる手はずを整えるかにかかっているのではないかと思います。
・鵜飼先生のメタファーには、体感者ならでは五程をふまえて論じていらっしゃるので、感激致しました。

私は、未来デザイン考程で問題を考える際、問題を3種類に分けたが、創る問題を見つけることができない限り、見える問題、探す問題だけでは、最善な問題解決にはならないことを虫鹿君のコメントより再確認した。最善未来が設定できない限り、結局探す問題も探せないとこが分かった。気づきの機会に深謝。

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November 09, 2007

創る問題の考え方にコメントをいただく

11月5日(月)発信の文書に、(特活)起業支援ネット副代表理事の鈴木直也さんより、次のようなコメントをいただきました。私自身も十分に表現できていなかったことに気づかせていただきました。感謝いたします。

なかなか興味深く読ませていただきました。
未来デザインでなくては真の問題解決ができないという事例・・・体験として
整理されていると思います。
見える問題も、探す問題も、アトピーという領域(場の設定)から出られずに
問題解決の方向が狭い場へと向かっていますが、創る問題では、
全体(いのち)のしくみの中で問題を位置づけ、問題解決の方向が
より広い場へと向かっていますね。

「最善の未来を描くことを支援する人」というのはとても大切な役割ですね。
教育者もそうあるべきであるし、親も、コンサルタントもカウンセラーにも
当てはまるものだと感じました。

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November 05, 2007

創る問題って何だろう?私のアトピー体験から見えてくるもの

未来デザイン考程の特徴の一つは「問題」の捉え方にある。
 ①見える問題(過去発想で見えてくるもの)
 ②探す問題 (現在発想で見えてくるもの)
 ③創る問題 (未来発想でみえてくるもの)

メタファーとして「アトピー性皮膚炎」を取り上げ、3種類の問題を考える。
なお、問題とは「理想」と「現状」のギャップを指す。

①見える問題
「過去のメガネで今を見た結果は・・・」(間違った対応となる)

 肌に湿疹が見受けられ、荒れている。痒く、乾燥するとひび割れができる。
 →当初は、ドクターが既存の知識から「はたけ」と診断され、赤外線を照射される治療(約40年前~30年前)。外用剤は副腎皮質ホルモンが微量含まれるタール系の薬。
 →その後、新たな学説に基づき、アトピー性皮膚炎と診断される。副腎皮質ホルモン剤の外用薬を肌に塗る。痒みが直ぐにひく。しかし、暫くするとまた同じことの繰り返し。結局、見える問題は、繰り返し発生。

②探す問題
「とにかく今知っている範囲で探した結果は・・・」(知らないことは問題とならない)

 肌に湿疹が見受けられ、荒れている。痒く、乾燥するとひび割れができる。見える問題を解決するための処方は、私の症状を悪化させていった。かつては手や腕のみであったのが、手、腕に加え、顔、首、体、足等に広がる。
 →湿疹ができる何かがあるに違いない。原因探しが始まった。
 →血液検査でアレルゲン確認。しかし、現在の検査項目のいずれにも陽性反応は出ず。
 →ほとんどの皮膚科医は、ここで追究をやめ、副腎皮質ホルモン剤の外用剤の投与を決断する。
 →ある皮膚科医は、嫌いな人には近寄るな!とのアドバイスをしてくれた。また、別のドクターは、どの様な時に悪化するか、長年の経験から分かっているだろうから、自分でそのパタンをハッキリさせ、悪化させるものを避けるように努力しなさい、と言う。かように、アドバイスは多様に皮膚科医からいただいたが、抜本的な解決には結びついてこなかった。いずれも対処療法であり、結局は、副腎皮質ホルモン剤を使用する方法か、使用しない方法を選択し、塗り方等の工夫を教えられることがほとんどであった。
 →結局、治るという皮膚科医は何処にもいなかった。次第に私は自分で副腎皮質ホルモン剤を薬局で購入し、酷くなるだろうと予想される前に塗ったり、酷くなったら塗ることを自分で対処するようになった。
 →問題を探し始めて思ったのは、一番よく知っているであろうドクターも問題を特定できず、解決策も手探りであるという事実を知り、失望。「治らないなら、どう付き合うか」を自分で考えようという思いが支配し、それが知らず知らず「正しいこと」と思うようになってしまった。
 →自分を変えるという発想は微塵もなく、現在の生活スタイルを前提に、「治らないなら、どう付き合うか」を考えていたに過ぎない。自分を変えるというレベルは、せいぜい、時間管理をしっかりするという程度のもので、それすらも真剣に取り組んではこなかった。
 →専門家に対して失礼とは思うが、皮膚科医自体も「アレルゲン以外」の要因に目を向けようとせず、異分野からの解決や異分野間を総合した解決を模索していない。結果、副腎皮質ホルモン剤の投与が、更に症状を悪化させることになった。

③創る問題
「まずありたいと宿願する姿をはっきりさせ、今まで知らなかった、関係ないと思っていたことまで検討した結果は・・・」(根本原因を探りあて、解決するための要所を解明し、克服すべき点を問題として把握する)

 結局、私は、根本原因を見出すことができず、だましだましの対処に終始した結果、より酷い結果となった。具体的には、高血圧、体全体よりリンパ液が流れ出す等、日常生活に支障をきたした。最悪の状態に直面し、最悪の未来を予測しました。
 最善未来を見出したい。でも、最善未来が描けない。
 そこから、単に腕の良いドクターの探索ではなく、最善未来を描けるように支援してくださる方を探索し始めた。免疫療法、民間療法等の本からヒントを得ようと躍起になりました。でも、その支援者は、身近なところにありました。
 「自分の内面を見つめ、身体を動かし、自然を活かしながら免疫力を高めたい」と気づかせてくださった「青空禅フォーラム」を主宰する伊東充隆ドクターです。
 ①「どもり」を持っていた私、取り巻く人間環境、ワークスタイルで耐えざる緊張状態にあり、胸に過緊張が発生している状態で、交感神経が優勢。
 ②リンパ球が減退しその流れも良くない。免疫力減退状態。
 ③水の取り方に注意する必要がある。症状から見て、細胞が水分を吸収できないでいる。水分は細胞が吸収する細胞内液と細胞が吸収しない細胞外液に分かれる。細胞外液は、体内にたまると毒となり、浸出液となって身体にたまるか皮膚からでてくる。よって、細胞が水を吸収できるように塩分と水のバランスを調整する必要あり。
 ④たんぱく質の吸収がどこかで上手くいっていなかった可能性が高い。例えば強固な便秘。腸の働きを修復、回復する。あわせて、酵素を体内に取り入れる。
 ⑤長年のホルモン剤投与で、腎機能、肝機能に障害がある。
 今まで、断片的に問題であると考えてきたことが一つの線でつながり、対処方法も変化した。

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July 12, 2007

編集工学の未来デザインへの応用

学生に未来デザイン考程を指導する際に直面する課題が2つある。第1の課題は「テーマからどの様な素材データを集めてくるべきか」、第2の課題は「素材データをどの様な観点からグループ分けするか」である。

私は、いずれの課題の克服にも、同じ手法が応用できると考えている。その手法は、松岡正剛氏が打ち立てた「編集工学」の「地の情報」という考え方であり、その展開方法である。

例えば、編集学校のテキストに、「みかん」の「地の情報」を変化させて、それぞれの地に対応する情報を2種類抜き出すという練習問題がある。地を色、味、形、匂、時間等に変えることで、異なる情報が導かれる。

第1の課題は、テーマをどの様な「地の情報」で考えることができるかをまず考えさせ、次いでそれぞれの地の情報に対応する具体的な情報を導出させ、対応させる。

第2の課題は、書かれた素材データ(定性情報)がどの様な「地の情報」の可能性があるかを考えさせ、同じような地の情報の素材データを同じグループとさせる。

未来デザイン考程の手順からすると、第1の課題が先に現れる。時には、最初に行ったテーマの地の情報探索でAに属していたとしても、課題2が現れる素材データのグループ分けで異なる地の情報に分類されても良い。第1に素材データを出すきっかけとしての地の情報であり、一旦出された素材データ群は、予期せぬ組み合わせていつでも新しい地の情報が発生することを否定されないからだ。

編集工学も実に面白い。また、同時に、編集工学のプロセスが瞑想に近いと思うのは私だけであろうか?

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December 07, 2006

知的熟練としてのキャリア考


 経営学部の鵜飼です。自分の経験を話すことは恥ずかしいものです。功を成したわけでもなく、41歳の現在でも生きることと、働くこととは何かを探す日々を送っているからです。
 しかし、今日、この場に立っています。仕事のことから始め、仕事を選択するための学生時代の取り組みについて話します。私のささやかな経験から、皆さんがヒントを持ち帰ることを祈っています。


 私自身のことをお話しする前に、私が使う「キャリア」という言葉の意味について簡単な解説を加えておきましょう。キャリアセンターで使用されている「キャリア・デザイン=人生設計」とは異なる意味で「キャリア」を用いています。私が学生であった1980年代末には、キャリア・デザインという考え方はあまり浸透していませんでしたので、これから述べる考え方を中心に、私は、自分自身の仕事と人生を考えてきたし、現在でも同じように取り組んでいます。

 では、私が用いる「キャリア」とは、「長期にわたる仕事の経験」をいいます。つまり、就職して以降の仕事能力を高めるための方法に関わる考え方です。重要な点は、長期にわたる仕事の経験を通じ、「多様性への対応」「変化への対応」「重層的効果」といった「知的熟練」が修得できるようにするということです。

 多様性への対応・・・取り扱う事柄の個性により多様性は発生します。例えば、卸売り業の営業職で見てみましょう。卸売り業でもっとも要求される技能は、小売店へのコンサルティング機能です。個々の小売店にその商圏を考慮し、どのような品揃えをしたら良いかを勧めることです。小売店の商圏には個性があり、マニュアルだけでは足りません。個性に対処するノウハウを身に付け、形成するには、結局多様な小売店を経験するほかはないのです。
 変化への対応・・・需要の変動、技術の変化や製品の変化に対応する能力です。
 重層的効果・・・関連の深い領域間の相互作用です。デパートの店頭販売の紳士服部門では10年ほどで店頭から仕入れに移ることも少なくないようです。そして、また、店頭に戻るようです。この意義は、仕入れが成功するには、消費者の要求を知らなければならず、店頭での経験はそのためのもっとも直接的な道だからです。また、販売量を増やすためにも仕入れの経験が重要です。仕入れで、メーカーや問屋の特徴を知って発注が出せるからです。

 これらへの対処能力は、より顧客に対しても、効率性に関しても、プラスの効果を持ちます。迅速で、適切な判断ができるからです。ゆえに、知的熟練と呼ばれます。

 ポイントは、いかに知的熟練が形成されるかです。ここにキャリアという考えが出てきます。「長期にわたる仕事の経験」をキャリアといいましたね。知的熟練が形成されるためのキャリアのくみ方は、「極めて難しく手も足もでない仕事に直ぐ付くのではなく、その前に、関連は深いが、やや易しい仕事に就く。似た内容で少し優しい日ごとを経験しておけば、コストは大幅に少なくなる。このようにして、関連の深い一群の仕事を、やさしいものから、次第に難しいものへと進んでいくようにします。訓練の方法は、OJTを中心に、節目節目でOFFJTをいれて行うことが一般的です。」関連の深い一群の仕事は、皆さんが思い描いているより「幅広い専門」でしょうね。

 みなさん理解できましたか?難しかったでしょうか?しかし、これを私は学部時代に学びました。残念ながら、愛知学院大学では、経営学部でもこの種の科目はありませんので、職業観が養われないという欠点が学校自体にあるような気がします。それを補完するのがキャリアセンターの役割でしょう。

 次に進む前に、導入部分の振返りの意味でポイントのみ3つ指摘します。
 ①知的熟練の形成には長時間かかるから、直ぐやめるのは、自分の仕事の能力を高めるチャンスを自ら捨てていることと同じ。
 ②単に、時間をかけて仕事をするということでは知的熟練は高まりません。よくよく与えられた業務を考え、つながりを考え、仕事をするという経験を通じた自己学習が欠かせません。これは、正統的周辺参加と呼ばれるものです。
 ③技術者、製造現場労働者だけではなく、ホワイトカラー全般にも形成する技能はあり、専門性はあるのです。これは、単なる資格とはことなる働く中でしか獲得できない技能であり、専門です。余談ですが、資格取得=即戦力という考え方は辞めましょう。資格は、その資格が求められる仕事の入口に立っただけで、仕事に就いた後に、知的熟練を高めていくのです。


 私の仕事の移り変わりを説明しましょう。大学院修士課程終了後、住友信託銀行の戦略子会社である株式会社住信基礎研究所に就職しました。10年つとめ、愛知学院大学に転職して来ました。私が愛知学院大学で教えている科目は、ベンチャービジネス論、企画・事業計画、起業実習などです。

 では、なぜ転職したか?住信基礎研究所に入社した時の頃から振返りながらお話しましょう。住信基礎研究所は、住友信託銀行、その他の民間企業から仕事を請け調査、コンサルティングをする業務と、経済産業省、国土交通省官公庁等より仕事を請け調査、政策立案支援を行う業務を主としています。いわゆる、シンクタンクです。仕事としては、企画提案型営業をし、顧客がつけば具体的に調査項目の洗い出し、調査、レポート作成、プレゼンテーションを行います。仕事の進め方としては、チームを組み、プロジェクト・リーダーが統括します。1チーム、3名から5名程度です。期間的には、3ヶ月から6ヶ月で、多い時には一人当り7つのプロジェクトを同時にこなさなければなりません。

 資格要件はありません。入社後、研究員補、研究員、副主任研究員、主任研究員、主席研究員と昇進し、時には、その先の部長職、取締役へと昇進していきます。私は、研究員補からはじまりました。1998年に設立された新しい会社でしたので、新入社員は私と同期入社のものが初の新卒採用でした。それ以外の社員は、ヘッド・ハンティングで、他の研究所、コンサルティング会社、事業系の会社より採用されており、それぞれが専門性を持って特定の領域を担当していました。

 私の場合は、大学院で企業経営に関わることを学んできましたので、経済・産業・企業経営のグループへと配属されました。この領域のプロフェッショナルになることを目指しての入社でした。あえて、10年間を3つの時期に分けてみましょう。

 第1の時期は、耐えること、尊敬することを学んだ時代。
 第2の時期は、業務の違いと自分の仕事の社会的意義を学んだ時代。
 第3の時期は、社内的には資金繰り、業務の企画、運営を、対外的には交渉、打ち合わせのポイントと重要性を学んだ時代。

 この10年の中で、4つのことを学んだと思っています。
 ①やりたいことを仕事として成立させるためには、一見雑用と思われる周辺の仕事が重要である。もっと言えば、核心部分、周辺部分両方が合わさって一つの仕事となる。
 ②最初はやりたくないと思っている仕事でも本腰を入れて行えば、仕事の楽しさを覚え、仕事を以下に進めるかの技能は修得できる。
 ③一つのことを一つの専門で見るのは片手落ちで、多くの観点から見ることができて、初めて拠りよい成果となる。
 ④信用は、仕事のことを良く知っていることではつかず、日頃の人間関係の構築が不可欠である。だからこそ、日々の業務の中で、社内、社外問わず「相手の意図を汲み取り、自分の意見と統合し、説得し、実際に業務をやり抜く」コンサルティング能力が欠かせない。

 住信基礎研究所の仕事は楽しく、多くの勉強ができました。自分の専門は、様々なテーマをより適切に、具体的に検証するための技能であり、検証するために様々な人をコーディネートし、一緒に協働するノウハウにあると思っています。これは意外でした。つまり、最初は企業経営のコンサルティング能力を高めるという意識で就職したのですが、それは実現できなくとも、異なる専門性を身につけることになり、そして、その意外な専門性を社会で生きていくうえで価値のあるものであると自信を持っていたのです。

 では、なぜ、転職したか?

 徐々に、調査研究業務の技能は高まってきて、仕事の内容も仕事の進め方も、2順目にはいっていました。昔やったことを繰り返し行うサイクルに入っていたのです。つまり、あまり考えずとも、仕事がこなせるという状態でした。これに耐えられなくなったのです。これが第1の理由でしょう。

 第2の理由は、会社組織として調査研究業務を行うことから発生する限界です。つまり、多様なテーマをこなしますが、それぞれ3ヶ月から6ヶ月でセミプロにはなる。もっと深く追究したくとも、他の仕事をこなさねばならず、それができない。他方、調査研究を行って満足のいく成果をあげても、その成果はあくまでも参考情報としてしか取り扱われず、実行される段階では、はじめの意図と違って進んでします。この状態にも耐えられなくなっていたのです。

 つまり、調査研究業務の技能を成長させることが、住信基礎研究所ではできないと判断しました。知的熟練という考え方から言って、私は、調査研究の前段階にある「より深い研究」、調査研究の次の段階にある「実践」のいずれかを修得したいと考えました。幅広い専門性があって、自分のやりたいことが完結すると思ったのです。そこで、転職活動を始めました。

 あえて、二兎を追う転職活動を始めました。一つは大学での研究職、もう一つは起業、すなわち自分の会社をつくり実践する。現在も起業の形式は変わりましたが、二兎を追い続けています。全てが、自分の仕事能力、すなわち知的熟練を高めることに結びつくと信じ、実践しています。


 結びに当り、仕事を選択するための学生時代の取り組みについて皆さんと一緒に考えて見ましょう。レジュメに、「10個の扉と1個の扉」という表現があります。私のところに訪れる比較的多くの学生は、就職活動に直面し、「好きなことがない」「どういう企業を選んでよいか分からない」等といいます。彼らは、就職に向き合っている今、1個の扉もありません。

 極端な例かもしれませんが、このようなことを言う学生の多くは、「家」→「大学」→「アルバイト」の悪のスパイラルに入っています。どの様な生活スタイルなのかな?尋ねてみました。生活がアルバイトを中心に回っています。大学から帰宅し、仮眠をとり、深夜のアルバイトに行く。早朝帰宅し、仮眠をとり、大学に来る。アルバイトから将来につながる何かに興味を持ち始めているのかというと必ずしもそうではない。社会への扉を一つずつ築いていく機会を無駄にしていることが多い様子が窺えます。

 この原因の一つは、「何かに興味を持ち、関心を抱く。そして、その先を試してみる。」といった考え方をしないことにあると最近では考えるようになりました。複眼思考で社会を見て就職希望先を考え、そして活動をしなければなりません。3年生も終わろうとしている時点でこのような悩みを抱えている先輩が多いのです。本日、参加している1年生、2年生の諸君は、いまから社会に向き合う「扉」を増やす考え方と活動にチャレンジしてみましょう。

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キャリア講義レジュメ(2006年11月24日)

「知的熟練としてのキャリア考」と題して、愛知学院大学の1年生及び2年生に私の経験と考え方を伝える機会を得ました。2回に分けて、発信したいと思います。

基本テーマ>働くということ
講義テーマ>知的熟練としてのキャリア考
主催>愛知学院大学キャリアセンター

配布資料>

本日講義の振返りのポイント

1.知的熟練。

2.やりきる。やりぬく。あきらめない。

3.自分のポジション・能力の進むべき道を確認する。

4.10個の扉と1個の扉

5.いろいろなことにチャレンジしよう!

キーワード解説
「キャリア」・・・長期にわたる仕事の経験
「知的熟練」・・・長期にわたる仕事の経験を通じ獲得できる「多様性への対応」、「変化への対応」、「重層的効果」等を可能にする技能
多様性への対応・・・取り扱う事柄の個性により多様性は発生し、絶えずその多様性に対応できる能力。
変化への対応 ・・・需要の変動、技術の変化や製品の変化に対応する能力。
重層的効果  ・・・関連の深い領域間の相互作用。

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